インバウンド需要の回復で、多言語サイトを検討する企業が増えています。とはいえ費用の相場も、翻訳方式や技術要件の違いも分かりにくいものです。この記事では、多言語サイト制作の費用と作り方、失敗しやすい注意点を解説します。結論は「全ページ翻訳ではなく、外国人客がよく見るページから始める」です。
多言語サイトが必要になる3つの場面(インバウンド・越境・採用)
多言語サイトが効果を出すのは、インバウンド集客・越境取引・外国人採用の3場面です。目的により必要な言語も翻訳すべきページも変わるため、最初に自社の狙いを明確にしましょう。
インバウンド集客(訪日客向け)
飲食・宿泊・観光体験・小売など、訪日客を店舗へ呼びたい場合です。訪日客の多くは、Googleマップと検索で行き先を決めます。優先言語は英語のほか、中国語(簡体字・繁体字)と韓国語が中心です。
越境EC・海外取引
商品を海外へ販売したい、または海外企業と取引したい場合です。まず英語ページを整えるのが基本です。商談目的なら、会社概要・製品情報・問い合わせの3点だけでも機能します。
外国人採用
国内で働く外国人材を採用したい場合です。求人ページを英語と「やさしい日本語」で用意する例が増えています。応募者には日本語学習者も多く、難しい翻訳より平易な表現が伝わります。
制作費用の相場|言語数・翻訳方式別
既存サイトへの追加費用は、1言語あたり20万〜100万円が目安です(2026年時点)。費用は「対応ページ数×言語数×翻訳方式」でほぼ決まります。
| 方法 | 費用の目安 | 品質 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 自動翻訳ツール導入 | 月額1万〜10万円 | 機械翻訳そのまま | 全ページを手軽に対応 |
| 機械翻訳+ポストエディット | 1言語20万〜50万円 | 実用レベル | 主要ページ中心の対応 |
| プロ翻訳+ページ制作 | 1言語50万〜150万円 | 高品質 | 予約・料金など重要ページ |
上記は既存サイトに言語を追加する場合の目安です。サイト全体を新規制作する場合は、日本語版の制作費が別にかかります。
現場でよくある失敗が、全ページ翻訳の見積もりで予算が尽きるパターンです。観光業の支援現場を見ると、訪日客が読むページはごく一部に偏ります。中心は「アクセス・メニュー(料金)・予約」の3ページです。まずこの3ページに投資し、反応を見て言語とページを広げる段階投資が安全です。
翻訳方式の選び方(機械翻訳・ポストエディット・プロ翻訳)
ページの重要度で翻訳方式を使い分けると、費用対効果が高まります。誤訳が売上や信頼に直結するページにだけ、人の手をかけるのが基本です。
機械翻訳(DeepL・Google翻訳など)
費用がほぼかからず、即日対応できるのが強みです。ブログやお知らせなど、更新が多く精度要求の低いページに向きます。ただし店名やメニュー名など固有名詞の誤訳は起きやすく、重要ページには不向きです。
ポストエディット(機械翻訳+人の修正)
機械翻訳の下訳を翻訳者が修正する方式です。プロ翻訳の5〜7割程度の費用感が目安で、品質と価格のバランスに優れます。主要ページを幅広くカバーする際の標準的な選択肢です。
プロ翻訳(人手翻訳)
料金表・予約条件・キャンセル規定など、誤訳がトラブルに直結するページに使います。キャッチコピーは直訳では魅力が伝わりません。翻訳ではなく「トランスクリエーション」(意訳・再創作)として依頼する方法もあります。
多言語化の技術要件(URL設計・hreflang・自動翻訳ツール)
URL設計とhreflangを誤ると、海外の検索結果に正しく表示されません。制作会社任せにせず、発注前に方式だけは把握しておきましょう。
URL設計は3方式から選ぶ
多言語サイトのURLは、サブディレクトリ・サブドメイン・別ドメインの3方式です。中小企業は、管理が楽なサブディレクトリ方式が第一候補です。
| 方式 | URL例 | 特徴 |
|---|---|---|
| サブディレクトリ | example.com/en/ | 管理が楽でドメイン評価を引き継げる |
| サブドメイン | en.example.com | 言語ごとにシステムを分けやすい |
| 別ドメイン | example.tw | 国別にブランドを分けたい場合向け |
サブディレクトリ方式は既存ドメインの評価を活かせるため、SEO面でも有利に働きます。
hreflangタグを設定する
hreflangは「このページの英語版はここ」と検索エンジンに伝えるタグです。各言語ページを相互に指定し、既定ページを示すx-defaultも加えます。設定を誤ると、英語圏の検索結果に日本語ページが出るなどの不整合が起きます。
自動翻訳ツールは言語別URLが作られるかで選ぶ
自動翻訳ツールの選定基準は、言語別のURLが生成されるかどうかです。タグを貼るだけのタイプは導入が手軽な一方、URLが分かれないと翻訳ページが検索結果に載りにくくなります。海外からの検索流入も狙うなら、言語別URLを生成するツールや静的な翻訳ページを選びましょう。
デザイン・文化面で失敗しやすいポイント
文字量の変化と文化的な配慮不足が、デザイン崩れや誤解の主な原因です。翻訳の正確さとは別に、制作時に次の5点を確認しましょう。
- 英語は日本語より文字量が増え、ボタンや見出しのレイアウトが崩れやすい
- 中国語・韓国語の表示フォントを指定しないと、書体の崩れや文字化けが起きる
- 日付の順序・通貨・電話番号(+81表記)を国際形式にそろえる
- 色や写真の印象は文化圏で変わるため、宗教・習慣に関わる表現は事前に確認する
- 問い合わせ導線は電話ではなく、フォームやSNSを主役にする
特に電話依存は機会損失につながります。海外からの国際電話は、心理的にも料金的にもハードルが高いためです。予約サイトやチャットで完結する導線を用意しましょう。
多言語サイトの集客(海外SEO・SNSの言語圏事情)
多言語サイトは、作っただけでは見つけてもらえません。言語圏ごとに主要な検索エンジンとSNSが異なるため、集客チャネルもセットで設計します。
| 言語圏 | 主な検索エンジン | 主なSNS・サービス |
|---|---|---|
| 英語圏 | Instagram・TripAdvisor | |
| 中国本土 | Baidu | WeChat・小紅書(RED) |
| 台湾・香港 | Facebook・Instagram | |
| 韓国 | Naver | Instagram・Naverブログ |
中国本土はGoogleやInstagramが使えず、対策の難易度が別格です。まず英語・繁体字・韓国語で成果を作り、本土対応は後回しにするのが現実的です。
訪日客向けなら、Googleビジネスプロフィールの整備が先決です。英語口コミへの返信や写真・メニュー情報の充実は、費用をかけずに始められて効果も出やすい施策です。
運用体制と更新フロー
更新が止まった多言語ページは、誤情報によりかえって信頼を損ないます。公開前に「どのページを・誰が・どう更新するか」まで決めておきましょう。
運用フローの一例です。
- 日本語ページの更新時に、翻訳対象かどうかを判定する
- 料金・営業時間などの重要情報は、最優先で全言語に反映する
- お知らせ類は機械翻訳で即日反映し、後日まとめて見直す
- 反映後にスマートフォン実機で表示崩れを確認する
外国語の問い合わせ対応も決めておきます。機械翻訳を使えば、メールの一次対応は社内でも可能です。言語別の返信テンプレートを用意しておくと、対応時間を数分に抑えられます。
よくある質問
多言語サイトの制作費用はいくらかかりますか?
既存サイトへの追加なら、1言語あたり20万〜100万円が目安です(2026年時点)。自動翻訳ツールなら月額1万円前後から始められます。対応ページを主要ページに絞るほど、費用は下がります。
何語に対応すればよいですか?
まず英語、次に自社の客層に多い言語の順です。訪日客向けは英語・中国語(簡体字・繁体字)・韓国語で主要圏をカバーできます。アクセス解析や予約データで国籍の内訳を見てから決めると無駄がありません。
Google翻訳のウィジェットを貼るだけでは不十分ですか?
閲覧の補助にはなりますが、集客目的には不十分です。言語別のURLが作られないため、海外の検索結果にほぼ表示されません。誤訳もそのまま表示されるので、重要ページには人のチェックを入れましょう。
既存サイトのまま多言語化できますか?
多くの場合、リニューアルせずに対応できます。自動翻訳ツールの導入や、CMSの多言語プラグインが代表的な方法です。ただし構造が古く複雑なサイトは、リニューアルと同時の多言語化が結果的に安く済む場合もあります。
まとめ
- 多言語対応の費用は1言語あたり20万〜100万円が目安(2026年時点)
- 全ページ翻訳ではなく「アクセス・メニュー・予約」など主要ページから段階投資する
- 翻訳方式はページの重要度で機械翻訳・ポストエディット・プロ翻訳を使い分ける
- サブディレクトリ型のURL設計とhreflang設定が海外SEOの土台になる
- 公開後の集客チャネルと更新体制まで含めて計画する
次の一歩は、アクセス解析で海外からの流入国と閲覧ページを確認することです。実際の訪問者データが、対応すべき言語と翻訳ページの優先順位を教えてくれます。
多言語サイトの制作や既存サイトのインバウンド対応でお困りの場合は、EMPLAYのホームページ制作サービスで支援しています。目的と予算に合わせて、主要ページから始める段階的な多言語化もご提案します。無料相談はこちらからお気軽にご連絡ください。
関連記事
- ホームページ制作費用の相場|種類別・依頼先別の料金比較と予算の決め方 - 日本語サイト本体の費用相場を知りたい方に
- ホームページ制作会社の選び方|失敗しない比較基準と発注前の準備 - 多言語対応に強い依頼先を見極める基準
- DeepL完全ガイド|高精度AI翻訳の使い方からAPI活用まで徹底解説 - 機械翻訳の実力と限界を確かめたい方に
- 越境EC入門ガイド|海外販売の始め方と成功のポイント - サイトの次に海外販売を検討する方に
- 飲食店ホームページの作り方|予約が増えるデザインと必須ページ
- クリニックのホームページ制作|医療広告ガイドラインと費用相場