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ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?進め方と成功条件

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは?進め方と成功条件

「ABMは大企業向けの手法で、うちには縁がない」と感じていませんか。実際は、ターゲット企業を絞れる中小BtoB企業ほど相性の良い手法です。本記事では、ABMの基本と向き不向き、ターゲット選定から少人数で始める手順、KPI設計までを解説します。結論から言えば、高価なツールは不要で、「営業が会いたい50社リスト」から始められます。

ABMとは|従来のリード獲得型マーケとの違い

ABM(アカウントベースドマーケティング)とは、狙う企業を先に決め、その企業群に集中してアプローチする手法です。不特定多数からリードを集める従来型マーケとは、出発点が逆になります。

従来のリード獲得型は「広く集めて、絞り込む」漏斗型の発想です。Webサイトや広告で見込み客を集め、その中から有望な企業を選びます。一方のABMは「先に絞り、深く攻める」逆漏斗型です。対象を数十〜数百社に限定し、1社ごとに施策を設計します。

項目リード獲得型ABM
起点集まったリードから選ぶ狙う企業を先に決める
対象不特定多数特定の数十〜数百社
主なKPIリード数・獲得単価ターゲット企業との商談数・受注額
営業との関係リードを渡して終わりになりがち最初から営業と共同で設計
向く商材単価が低〜中で対象が広い単価が高く対象を絞れる

BtoBの購買では、複数の部署や役職者が意思決定に関わります。ABMは「個人」ではなく「企業(アカウント)」単位で接点を管理します。そのため、組織的な意思決定の実態に沿った攻め方ができます。

ABMが向く企業・向かない企業の条件

ABMは、1社あたりの取引額が大きく、狙う企業を特定できるBtoB企業に向きます。単価が低く、顧客数を増やして伸ばすモデルには不向きです。

向く企業の条件

  • 1社あたりの年間取引額が大きい(目安として100万円以上)
  • 「この業界のこの規模」とターゲットを数十〜数百社に特定できる
  • 決裁に複数の部署・役職が関わる商材を扱っている
  • 既存顧客への追加提案(アップセル・クロスセル)の余地がある

向かない企業の条件

  • 単価が低く、顧客数で伸ばすモデル(月数千円のツール販売など)
  • ターゲットが広すぎて、絞り込む基準を作れない
  • 営業とマーケが分断されており、共同でリストを作れない

判断に迷う場合は「受注1件の価値が、1社にかける手間を上回るか」で考えます。手紙や個社向け資料の作成に数時間かけても割に合う商材なら、ABMの候補です。

ターゲットアカウントの選定方法(ICP設計)

最初にICP(理想顧客プロファイル)を定義し、合致する企業をリスト化します。既存の優良顧客の共通点から逆算するのが実務的です。

ICPとは「自社が最も価値を提供でき、利益も出る顧客像」を言語化したものです。次の手順で作ります。

  1. 優良顧客を10社書き出す。基準は粗利率、継続年数、取引拡大の実績です。
  2. 共通点を抽出する。業種、従業員数、商流、抱えていた課題、導入のきっかけを並べます。
  3. ICPを1枚にまとめる。「〇〇業界、従業員50〜300名、△△の課題を持つ企業」の形式で十分です。
  4. 条件に合う企業を集める。業界名簿、展示会の出展社リスト、既存顧客の同業他社などから探します。
  5. 3段階にランク分けする。優先度に応じて施策の濃さを変えるためです。
ランク社数の目安施策の濃さ
Tier110〜20社1社ごとに個別の施策を設計
Tier230〜50社業界・課題別のセグメント施策
Tier3それ以外メルマガなど汎用施策で接点維持

ランク分けの基準は「取引できたときの大きさ」と「勝てる見込み」の掛け算です。規模が大きくても勝ち筋のない企業より、中規模でも紹介の糸口がある企業を上位にします。

アプローチ施策の組み立て(コンテンツ×営業×広告)

施策は「コンテンツ」「営業」「広告」の3つを、同じターゲットに重ねて設計します。単発の施策ではなく、複数の接点を組み合わせて面を作るのが基本です。

コンテンツ施策。ターゲット業界に特化した事例記事や資料を用意します。Tier1企業には、社名を入れた個社向け提案資料まで作り込みます。汎用資料より目を通してもらいやすくなります。

営業施策。手紙(セールスレター)、電話、既存顧客への紹介依頼、展示会での指名訪問などです。特に中小企業では、キーパーソン宛ての手紙が有効な場面があります。開封されやすく、大量送信のメールと差別化できるためです。

広告施策。特定の企業や業界に絞った配信です。LinkedIn広告の企業ターゲティングや、IPアドレスで対象企業に絞る手法があります。ただし少人数で始める場合、広告は後回しで構いません。コンテンツと営業の2軸だけでも成立します。

3つの施策は順番に行うのではなく、同じ月に同じ企業へ重ねて当てます。「業界向けセミナーの案内→1週間後に電話」のように、接点をつなげて設計します。

少人数で始めるライトABMの手順

専用ツールは不要です。営業が「会いたい」と思う企業50社を書き出し、スプレッドシートで接点を管理するところから始めます。

ABMはツール導入の話から始まりがちですが、現場の経験則では順序が逆です。リストと運用の型が先で、ツールは接点が増えてからで間に合います。

  1. 営業と30分の会議を設定し、「会いたい50社」を書き出す。基準は「取引できたら大きい」「勝ち筋がある」「接点の糸口がある」の3つです。
  2. スプレッドシートに管理表を作る。列は「企業名・Tier・キーパーソン・接点履歴・次のアクション・担当・期限」の7つで足ります。
  3. 各社の「入口」を調べる。既存顧客からの紹介、共通の取引先、過去の問い合わせや名刺、展示会などです。
  4. 月ごとの施策を1つ決めて実行する。例として、今月はTier1の15社に事例資料を郵送し、翌週に電話します。
  5. 週次15分の確認会議を行う。進んだ企業、止まった企業、次のアクションだけを確認します。
  6. 四半期ごとにリストを入れ替える。半年接点を作れない企業は外し、新しい企業を足します。

この運用が3か月回れば、ABMの型はできています。接点履歴が増えて手作業が苦しくなった時点で、CRMやMAツールの導入を検討すれば十分です。

KPIの設計と成果が出るまでの期間

KPIはリード数ではなく、「ターゲット企業との関係の深まり」で測ります。受注までは6か月〜1年を見込むのが目安です。

ABMでリード数を追うと、ターゲット外の獲得に流れて本末転倒になります。段階ごとに次のようなKPIを置きます。

段階KPIの例
接点づくりキーパーソンを特定できた社数(カバレッジ)
関係構築資料請求・セミナー参加・返信があった社数
商談ターゲット企業との商談数・提案数
成果受注数・受注額・平均単価

期間の目安は、接点づくりに3か月、商談化に6か月、受注まで1年です。商材の検討期間が長いほど後ろにずれます。最初の四半期は受注ゼロでも、カバレッジが伸びていれば順調と判断します。

経営層への報告では「50社中、キーパーソンと会話できたのは18社」のように、母数を固定した数字を使います。分母が動かないため、進捗が直感的に伝わります。

よくある質問

ABMにMAツールや専用ツールは必須ですか?

必須ではありません。対象が50社程度なら、スプレッドシートで運用できます。接点履歴が数百件を超え、手作業での追跡が難しくなった段階で、CRMやMAの導入を検討します。

何社から始めるのが適切ですか?

営業1〜2名の体制なら、20〜50社が目安です。100社を超えると1社ごとの施策が薄まり、リード獲得型と変わらなくなります。少なすぎると検証が進まないため、まず50社で回すのが現実的です。

リード獲得型のマーケティングと併用できますか?

併用できます。実務では、Tier1・2にABM、それ以外にコンテンツマーケやWeb広告という組み合わせが一般的です。既存のリード獲得施策をやめる必要はありません。

営業部門の協力が得られない場合はどうすればよいですか?

リスト作りを営業起点に変えます。マーケ側が作ったリストを渡すのではなく、「会いたい会社を教えてください」から始めると協力を得やすくなります。営業が欲しい商談に直結する設計にすることが前提です。

まとめ

  • ABMは狙う企業を先に決め、集中してアプローチする手法です
  • 1社あたりの取引額が大きく、対象を絞れるBtoB企業に向きます
  • ターゲットは既存優良顧客の共通点から逆算し、Tierで濃淡をつけます
  • ツールより先に「会いたい50社リスト」とスプレッドシート運用を整えます
  • KPIは接点の深まりで測り、受注までは6か月〜1年が目安です

次の一歩は、営業担当と30分の打ち合わせを設定し、「会いたい50社」を書き出すことです。リストができた時点で、ABMは半分始まっています。

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